憲法について

2009年9月12日 (土)

日本国憲法を読んでみよう(その13.国会)

父「久しぶりだね。この連載があったことも忘れられていそうだ。今回は国会、制度論なので一気に読んでしまおう」

(なお、条文は続きに記載します)

第四十一条【国会の地位、立法権】唯一の立法機関
第四十二条【両院制】衆院と参院
第四十三条【両議院の組織】国民の代表
第四十四条【議員及び選挙人の資格】普通選挙
第四十五条【衆議院議員の任期】任期4年解散有
第四十六条【参議院議員の任期】任期6年、3年ごとに半数選挙
第四十七条【選挙に関する事項の法定】公選法
第四十八条【両議院議員兼職禁止】
第四十九条【議員の歳費】国会法
第五十条【議員の不逮捕特権】会期中の不逮捕特権
第五十一条【議員の発言・票決の無責任】院内の行動は院外では無責任
第五十二条【常会】年一回の常会
第五十三条【臨時会】内閣が臨時会の招集。総議員1/4以上の要求でも。
第五十四条【衆議院の解散、特別会、参議院の緊急集会】
1衆院解散後40日以内の総選挙、選挙日30日以内の国会召集
2衆院解散時、参院閉会。緊急時は内閣が参院の緊急集会を要求。
3緊急集会の措置は衆院の事後承諾が必要。
第五十五条【議員の資格争訟】議院は議員の資格に関する争訟を裁判
第五十六条【定足数・票決】1/3が定足数。過半数で議決。同数なら議長裁定。
第五十七条【会議の公開、秘密会】
1.議会は原則公開。秘密会も可。議事は原則公開
第五十八条【役員の選任、議院規則、懲罰】議長など選任。
両議院は院内秩序を乱した議員の懲罰可。議員除名には出席議員の2/3。
第五十九条【法律案の議決、衆議院の優越】
法案は両議院の可決で法律
衆院可決、参院否決、衆院で2/3多数で再可決で法律
参院が、衆院可決後60日以内に議決しないときは否決とみなす
第六十条【衆議院の予算先議と優越】
第六十一条【条約の国会承認と衆議院の優越】
予算と条約は事実上衆院の決定のみ
第六十二条【議院の国政調査権】
第六十三条【国務大臣の議院出席】
第六十四条【弾劾裁判所】国会で裁判官を裁判

父『まず、国会は国民の代表、と明記されている。当たり前のことだ』

子『日本に住んでいる外国人の立場はどうなるの』

父『外国人の代表を日本の国会には送り込めないよ。外国人はいつでも自分に国に帰ればいいんだから。だから、国会議員の選挙権や被選挙権を外国人に与えるのはこの条文にも違反している。ついでながら、地方参政権ですら違憲なのはすでに勉強した通りだ』

子『衆議院の圧倒的な優越が明記されているけど、参議院の存在価値はなんなの』

父『衆議院は、解散があるうえに4年しか任期がない。従って民意を反映しやすいので、優越とされるんだ。参議院は、任期が6年間確定。だから、選挙を気にせず大所高所にたった判断を期待されているんだ。そういう立場の差を踏まえて国会議員の職責を全うすべきなんだけど、今はそんな考えの議員がいるようには見えない。衆院と参院の意思が異なれば混乱するだけ。参議院は、衆議院解散中の緊急集会のように衆議院のバックアップという意味を除けば、無用の長物だろう』

子『不逮捕特権ってなあに?議員は泥棒してもいいの?』

父『議員を逮捕していいとなればどうなる?政府がでっち上げて警察に野党議員を逮捕させて、その間に法律をどんどん通すことだってできるだろ。そういうことを防ぐために不逮捕特権があるんだ。もちろん、たとえば本当に泥棒したのなら、そんな奴は議員の資格なんかないね。そういう場合は当然各議院が逮捕を認めることになるよ』

子『院外で無責任というのはなに?』

父『政府に都合の悪い発言した議員を、議会の外で政府が議員資格を剥奪することなんかできませんよ、ということなのかな。この2条は、政府が議会を形骸化することはできないよ、ということを明記したのだとお父さんは思う。

もちろん、好き勝手を言っていいというわけでなく、無茶苦茶を言えば議会内では責任を取らされるか、批判されて次の選挙で落選するだけのことだ』

子『衆院解散後に40日以内の総選挙ってのんびりしているわね』

父『今回の総選挙ではその規定に沿った形で選挙が行われたけど、その間は事実上立法府がなくなるのだから、長すぎると思うよ』

子『選挙の方法はどうなの?小選挙区と比例代表ってわけわかんないのだけど』

父『それは憲法は法律、つまり公選法におまかせしているので憲法論議ではないね。お父さんは、小選挙区は死票が多くなりすぎるから、比例代表だけにしてしまうほうがすっきりすると思うよ』

子『それにしても条文がたくさんある割に書いてあることは少ないね』

父『そういうなよ。憲法は、政府の好き勝手を許さないためのもの、という大前提なんだからこんなもんだよ。

次は内閣だ。これも一回ですまそう』

(続きに条文を記載しました)

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2009年8月20日 (木)

日本国憲法を読んでみよう(その12.国民権利義務その7)

父「次は犯罪と刑罰に関する条文だ。刑罰を科すことは基本的人権を奪うことだから、法律に定められた手続きを踏んで慎重にすべきで、これも大事なことだね」

第三十一条【法定手続の保障】
 何人も、法律(刑事訴訟法等)の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第三十二条【裁判を受ける権利】
 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

第三十三条【逮捕に対する保障】
 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第三十四条【抑留・拘禁に対する保障】
 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第三十五条【住居侵入・捜索・押収に対する保障】

 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

第三十六条【拷問及び残虐な刑罰の禁止】
 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁止する。

第三十七条【刑事被告人の諸権利】

 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。

 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

第三十八条【不利益な供述の強要禁止、自白の証拠能力】

 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第三十九条【刑罰法規の不遡及、二重刑罰の禁止】
 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

第四十条【刑事保障】
 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律(刑事補償法)の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

父「31条は罪刑法定主義。近代法の大原則だ。もっとも、大東亜戦争の連合国による復讐劇、いわゆる「東京裁判」では事後法濫発だったから、西欧諸国は原則とも思っていないのかも知れないけどね

32条は裁判を受ける権利。裁判なしで刑を科せられることはない、ということ。交通違反の切符を切られたときでも、不満なら裁判を起こすことはできるんだ。もっとも、そんな面倒なことは普通はしないけど。

33条から35条は逮捕のためには令状が必要という原則。令状なしで家宅捜索したり逮捕できるような法律は明らかな違憲だけど、人権擁護法案ではそれをやろうとしているね。どうも「護憲」を掲げる人に限って憲法を無視する傾向にあるようだな。

眠くなってきただろうからこの辺にするけど、死刑が36条の「残虐な刑罰」にあたるかどうかは議論のわかれるところ。現在の法解釈では、たとえばノコギリ引きのような苦痛を与え続ける刑罰は残虐だけど、通常の死刑は応報刑であり残虐な刑罰ではない、ということらしいね。まあ、常識的な判断だと思うよ」

子「普通の生活をしている限りこれらの条文は関係ないから眠いわ」

父「そんなことはない。いつ間違って逮捕されるかわからないし、被害者になる可能性だってある。国民として知っておくべきものだよ。

やっとこれで権利義務が終わった。最近は、加憲とか言って、不足している権利を書き加えるべきだ、と主張する人がいるね。たとえばプライバシーの権利とか。でも、あんまり権利ばっかり増えるのはどうかと思うね。

それより、国民としてごく当たり前な、国家に忠誠を誓う義務、国旗国歌に敬意を表する義務などは最低限必要だろう。政府が憲法を守る主体だから、政府が憲法を守ろうとしないならそれを批判するのは当然のこと。政府を批判する権利は絶対に守られるべきだ。しかし、国家を転覆させようだの他国に売り渡そうだのいう権利が認められるはずもないし、我々が日本と日本人を大事にすべきことは当然だ。そういう根本を忘れた憲法はおかしいね」

子「なんでそうなっていないの」

父「そりゃあ日本を占領していたアメリカが作った憲法だからね。日本二度と立ち上がらないようにしたかったんだろう。独立してからも後生大事にするようなものじゃない。日本国憲法を廃棄しなかったのは諸先輩方の怠慢だ」

子「そうじゃないと思うわ。日本を大事にすることは憲法に書くまでもないことでしょ。そんな当たり前のことを、わざわざ憲法に書くなんておかしいわ」

父「(絶句)…まさにその通りだね、一本取られたよ。でも、当たり前すぎて誰も口にしないのをいいことに、無茶苦茶をやる連中がいるんだ。この前、日の丸を切り貼りして自分らの旗を作って、しかもそれを指摘されたときに、神聖な党のシンボルマークをこんな作り方したのが悪かった、と国旗を切り裂いたことを屁とも思っていない奴がいたね。それがある政党の党首で次の総理大臣になる可能性が高いんだから、どういう国かと思うよ。こんな連中を育てたのは日本国憲法なんだ、やっぱり破棄するしかないね。

次回は国会についての条文。その後は内閣や裁判所など、国の制度を決めた条文が続くから見ていこう」

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2009年8月11日 (火)

日本国憲法を読んでみよう(その11.国民権利義務その6)

父「今回は教育、勤労、納税の日本国憲法三大義務が出てくるよ」

第二十六条【教育を受ける権利、教育の義務、義務教育の無償】

 すべて国民は、法律(教育基本法第三条第二項)の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

 すべて国民は、法律(教育基本法第四条)の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

第二十七条【労働の権利・義務、労働条件の基準、児童酷使の禁止】

 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律(労働基準法)でこれを定める。

 児童は、これを酷使してはならない。

第二十八条【労働者の団結権・団体交渉権その他団体行動権】
 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

第二十九条【財産権の保障】

 財産権は、これを侵してはならない。

 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律(民法第一編)でこれを定める。

 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

第三十条【納税の義務】
 国民は、法律(憲法第八十四条)の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

父「これらは主に国民の義務について述べた条文だ。先日も言ったけど、憲法は立法者を縛るものだから、ここに限定列挙している以外の義務を国民に課すことは明らかな憲法違反と言っていい。裁判員制度なんてその最たるものだ。また、29条は財産権を保障したものだけど、私有財産を公共の福祉のためには国に提供しなければならない、という一種の義務とも言えるのだね」

子「義務だから全員がしなければならない、ということでもないのね」

親「そうだよ。たとえば税金を、収入の少ない人から取らないのは違憲ではない。でも、国民の義務と書いておかなければ、税金なんて取ってはいけないことになるね。

この4条についての総論はここまで。以下順番に見ていこうか。まず親が子に教育を受けさせる義務と、子供が教育を受ける権利があるんだ。権利は放棄していい、ということではないよ。お前が宿題をサボろうとしたら、お前に宿題をやらせるのは親の義務だ」

子「宿題はもうやったから大丈夫だよ」

父「この勉強もお前の義務だから、まだまだがんばれ。次は労働の権利と義務。労働は義務でもあり、権利でもあるんだね」

子「義務と権利ってどういうこと?」

親「権利の意味は、第2項と合わせてみれば、まともな待遇で働く権利がある、ということだ。義務というのは精神論、親から援助を受けて働かない人がいても憲法違反で訴えられることはないわけだから」

子「うちは貧乏だから、わたしは大人になったら働かなければ食べられないわけね」

父「そうだよ、残念でした(笑)」

子「第28条はどういうこと」

父「マルクス主義的な発想だけど、貧乏な労働者は、金持ちの経営者に対抗しようにも、売れるものは労働力だけ、いつ首になっても仕方ない、ということでは立場が弱すぎるから、団結して対抗できる、という権利を保障したものだ」

子「29条、30条は当たり前ね」

父「現代から見れば当たり前に過ぎないけど、でもこの2条は近代憲法の根幹となる条文だね。財産権の保障と租税法定主義は近代国家の根本の一つなんだ。政府は、法律で決められた以外の税金は取ってはいけないし、お金を稼いだときは非課税だったのに後付けで課税、も同様に許されないことだ。

ただ現代では経済行為も税制も非常に複雑なので、法律で全部決めきれない部分もあって、税務署の判断で似たような行為に適用される法律を準用することもあるのは仕方ないのかな。でも、税制は複雑すぎるね。法律の抜け穴を作らないためにはできるだけ簡単にしたほうがいいけど、税理士が失業しないようにしているのかな」

子「そんな理由で税制を決められてはたまらないわ」

父「これはまあ穿った見方だけど、でも現実はそんなものかも知れないなあ。こういうところこそ改革すべきなんだろうね」

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2009年8月 3日 (月)

日本国憲法を読んでみよう(その10.国民権利義務その5)

父「毎週連載をするつもりだったけど1週間飛んでしまった、これはいかんなあ、反省だ。親は夏休みでもなんでもないのに、子供が休むと夏休み気分になってしまうね。さあ、気を取り直して続けよう」

第二十四条【家族生活における個人の尊厳と両性の平等】

 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない。

第二十五条【生存権、国の生存権保障義務】

 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

父「今日は簡単にこの2条だけ見よう。
24条は、結婚はふたりだけの問題だよ、と書いているね。本当にそうかな」

子「子供はどうなるの」

父「親の離婚に子供は口を挟めないし、また、子供が結婚するときも親が何か言える立場ではない、ということだよ」

子「子供だって当事者だよ」

父「そうだね。結婚するときも、親や家族に祝福されるのが一番だ。この条文だけだと家族の観点があまりにも軽視されているんだ。家族がいちばん、そう思わないかい」

子「ブログの宣伝をしちゃだめだよ」

父「ははは。でもまあ、憲法としてはこんなもんかもしれないけどね。憲法は国民を縛るためのものではなく、憲法以上の立法をしてはいけない、という趣旨の、国を縛るためのものだからね。家族が結婚に賛成・反対することを禁じているわけじゃないんだ。結婚には必ず家族の同意を必要とする、というような立法を禁止しただけのことだ。あと、両性の合意、という文言は重要だ。男同士で結婚を認める、という立法も禁止なんだ」

子「憲法って国を縛るものなの」

父「そうだよ。近代憲法は、基本的には、国・地方自治体と公務員を縛るもので、家族のあり方や道徳などを国民に説くものではないんだ。

それじゃあ25条を見ようか。これは、第1項で、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。と宣言している。権利がある、ということは、その権利を守る義務を持っているのは国という趣旨で、第2項で、国に努力義務を課しているわけだ」

子「国は努力すればいいの」

父「ま、そうだ。この規定に沿うために、生活保護などの制度があるんだね。あくまでも「文化的で最低限度」の保護。また、この権利を国から保障されるのは国民だけ、ということにも注意しよう。これ以上を保障するのは明らかな憲法違反だ。また、国民以外に準用することは間違いではないけど、なんか違和感あるね」

子「遊んでいても生活が保障されるということ?」

父「そうじゃないよ。憲法上、国民には労働の義務がある。あくまでも病気などで働けない人のため、緊急避難として生活保護の制度は運用されるべきなんだ。でもたとえば、よくヤクザ屋さんたちが生活保護されているニュースが流れるね。生活保護の原資は税金だから、お父さんたち納税者がヤクザ屋さんを養っている理屈だけど、そんな馬鹿な話は許されないこと、お役所は制度を厳格に運用すべきだね。

余談だけど、税金は払う方は大変。でも使う方はなんせ官費だからお気楽なんだろうな。予算を余らせると大変だから年度末に無駄遣いされるのはいつものことだし。ほんと酷い話だ」

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2009年7月20日 (月)

日本国憲法を読んでみよう(その9.国民権利義務その4、政教分離原則)

父「今日は前回は省略した信教の自由、政教分離について考えてみよう」

第二十条【信教の自由、国の宗教活動の禁止】

 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

父「信教の自由とは、政府がどこかの宗教を国民に強制してはいけない、宗教団体も政治的権力を持ってはいけない、ということだ。歴史的に見て、宗教が政治に関係すると碌なことはないんだ」

子「公明党の支持母体は創価学会だけどそれはいいの」

父「内閣法制局の解釈では、グレーだけど黒ではない、ということらしい。おかしいと思うけどね」

子「首相が靖國神社に参拝するのはどうなの」

父「首相が国民に対して靖國神社参拝を強制したら問題だろうね。でも、首相が参拝したところで「特権」「宗教的活動」などにあたるはずもない。完全な政教分離などできるはずもない。なんでかわかるかい」

子「どうしてなの」

父「例えば、京都には有名なお寺がたくさんあるね。もし税金から一切援助してはいけないとなったら、京都市は、お寺を文化財として保存することに関与できなくなる。お寺に資金がなくなって土地が売られ、伝統ある寺院が取り壊されてそこにマンションがばんばん建つ、なんてことはいいのかな?」

子「いいわけないじゃん。神社仏閣は貴重な文化財だよ」

父「現実に神社仏閣に対して京都市はお金を出しているけど、神社仏閣の宗教を応援するためかな」

子「しつこいよ。日本人にとって大切な文化財を保護するためで、宗教を応援するためのはずないよ。京都の神社仏閣は宗教の建物かも知れないけど、一般的には観光地だよ」

父「その通りだ。つまり、神社仏閣は日本の伝統文化の担い手。同じように、宗教法人が運営する私立学校は、教育の担い手。そういう面を国や地方自治体が応援するのは憲法違反とすべきではないんだ」

子「じゃあ、政教分離というのはなんなの」

父「政教分離とは、政府が宗教を不当に弾圧したり優遇したりするのはだめだし、宗教も政治にかかわることで不当な利権を漁ったり不法行為を認めさせたりするのはだめだよ、ということだ。例えば、どこかの宗教団体の構成員しか見られない秘密の像があるとしよう。宗教団体の信者は拝めるけど、他の人たちは排除している。そういうものは文化財ではなく、宗教の象徴だから、それにお金を出してはいけないんだ。私立学校でも、例えば1日6時間の授業のうち、1時間は礼拝の時間、5時間は英数など一般的教科の時間としようか。礼拝の時間に対して私学補助は×、一般教科の時間に対しては○なんだ」

子「なんとなくわかってきたわ」

父「慰霊という行為はどうだろう。亡くなった方を単に思い出すだけなら宗教的行為ではないけど、「霊」を慰める、という行為はどう転んだって宗教的なものだ。日本人でも、最近は無宗教の葬式が増えているらしいけど、無宗教ではなく、特定の宗教の形式によらない、ということだ」

子「お墓参りも宗教的行為ね」

父「そうだね。だったら、慰霊を国が行ったら憲法違反なんだろうか。そんなことはないね。8月15日の戦没者追悼式が問題にされたことはない。東京都慰霊堂では仏式、つまり特定の宗教で行っているけど、それですら問題ない」

子「あくまでも先人に感謝し慰霊すること目的であって、宗教団体の応援が目的ではないからいいのね」

父「そうだよ。ところが、戦死なさったみなさまに感謝するために靖國神社に首相が参拝するだけで、政教分離が大騒ぎになる。日本の政教分離というのは、政治と神社の分離だけが徹底される、インチキなものだ」

子「なんでそうなったの」

父「GHQが目の敵にしたのを未だにひきずっているのだね。あと、東京裁判という名の戦勝国の復讐劇を今でも金科玉条にする人たちがいて、その裁判で一方的に殺された人たちを貶めたいんだ。すべては日本を大東亜戦争の敗戦国のままにしておきたい人たちのご都合なんだ。靖國神社はその象徴だ。まあ、この憲法は敗戦のときにGHQが押しつけたもの、当然といえば当然だ。これをいつまでも廃棄せずに放置している日本人の怠慢こそが問題だよね」

子「戦争に負けてからもう60年以上たつわよ」

父「いい加減もう敗戦国はやめたらいいと、お父さんも思うよ」

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2009年7月11日 (土)

日本国憲法を読んでみよう(その8.国民権利義務その3)

父「今日は「自由」に関する条文だ。これがいっぱいある」

第十八条【奴隷的拘束及び苦役からの自由】
 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

第十九条【思想及び良心の自由】
 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第二十条【信教の自由、国の宗教活動の禁止】

 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

第二十一条【集会・結社・表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密】

 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

第二十二条【居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由】

 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

第二十三条【学問の自由】
 学問の自由は、これを保障する。

父「信教の自由、政教分離原則について話し出すと長くなるから、これだけは次回のテーマにしよう。これらの「自由権」を謳った条文を見てどう思う」

子「国民という言葉が出てこないわね」

父「そうなんだ。自由権は誰にでも認められるもの、という考えで、国民に限らないんだ。でも、実は自由権がない人がいるんだね」

子「悪いことをした人?」

父「それは第18条の「犯罪に因る処罰」によるものだから仕方ないね。自由権がないのは、皇室の方々。職業選択の自由も、表現の自由もないんだ。もちろん参政権もない」

子「天皇陛下が政治家になったり、特定の政治家を応援するのは変だから当然よ」

父「そうなんだ。でも、例えば贔屓の力士の名前も言えないのは辛いよね。

話を戻そう。例えば表現の自由は保障する、とあるけど、何を言ってもいいのかな。例えば、ウソを付く自由、ってあるのかな」

子「上沼恵美子さんなんか好き放題無茶苦茶言っているわよ」

父「あれはウソではなくホラだから誰も信じないでしょ、笑いのネタだからいいの。そうでなく、例えば必ず値上がりする、と言って潰れた会社の株を売ってもいいのかな」

子「そんなのは詐欺だからだめよ」

父「そうだ。犯罪をする自由、人に迷惑をかける自由などないね。また、例えば度を超えてエッチな本を売るのも問題があるだろう」

子「迷惑をかけるのは全部だめなの」

父「なんでもそうだけど、程度問題だね。例えばトラックが走れば騒音も排気ガスも出る。ほんの少しでもうるさいのは迷惑だからやめろ、ということになれば、物流が止まるから生活できないね。でも、今は珍走団と言うらしいけど、暴走族が爆音を出しながら暴走する自由なんか、許されない話だ。ある程度はお互い様だけど、それで済まないようなことはしてはいけなんだ。ここからだめ、という線引きは難しいけどね」

子「人の嫌がることなら、批判することはだめなの」

父「政府や政治家の批判をする自由は、ウソをつかない限り、普通の人には全面的に認められるべきだ。政府の批判をしたら牢屋にぶち込まれるようでは民主主義ではないね。ただ、マスコミなんかは、社会に対する影響も責任もきわめて大きいから、例えば民主党の悪いことは一切報道せず、自民党の悪いことだけ徹底的に報道するなどは許されることではないよ。

また、最近の話題だけど、8月6日に田母神さんが広島で「日本が唯一の被爆国でなく、共産圏の核に日本の反核団体が寛容であることへの疑問を踏まえ、いかに核の惨禍を回避するか」という趣旨の講演会をしようとしているのだけど、広島市長がやめてくれ、と言っているわけだ。要請文では「いつどこで、何を発言するかは自由」と書いてはいるのだけど、「被爆者や遺族の悲しみが増す結果になりかねない。広島での8月6日の意味は、表現の自由と同様に重要なもの」(全文)としているんだ。気に入らないし迷惑だからやめろ、ということだ」

子「核の惨禍を回避する、という講演会がなんで迷惑なの?」

父「おかしな話だよ。アメリカの核はだめだけど中国や北朝鮮の核は素晴らしい、「あやまちは繰り返しません」と呪文を唱えることだけが許されている、などという無茶苦茶な思想に侵されているんだ。一番大事なのは「原爆を二度と食らわない」こと、それを考える講演会が迷惑だなどというのは、憲法違反はもちろんだけど、人間としてどうかしているね。

「学問の自由」も、犯罪行為でない限り認められるべきなのは当然だ。聖書に反する研究は許されない時代もあった。昔、ガリレオは「地球は動いている」と言って、聖書に反するとして処罰された。学問の自由を謳っている筈の現代の国でも酷い例があるね。例えば韓国では、歴史の先生が竹島は歴史的に見て日本の領土であると言えば、まあ間違いなく先生をクビになるわけだ」

子「検閲をしてはならない、とあるけど、学校教科書の検定はいいの」

父「それは別の話だよ。学校で学ぶ以上、指導要領に沿って教えるのは当然だ。小学1年生の算数教科書に、高校で習うべき微分積分が載っていたら困るだろ。でも、それを「小学1年生向け微分積分」として出版するのは自由だ」

子「そんな無茶苦茶な本、売れるわけないよ」

父「わかりやすく大げさに書いただけだよ。実際は、歴史教科書の家永訴訟が有名で、書き出すときりがないから、これくらいにしておこう」

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2009年7月 4日 (土)

日本国憲法を読んでみよう(その7.国民権利義務その2)

父「権利に関する条文はたくさんあって解説が面倒だ。今日は簡単に、政府に対する国民の権利を書いた部分を読もう」

第十五条【公務員の選定罷免権、公務員の性質、普通選挙と秘密投票の保障】

 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

第十六条【請願権】

 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

第十七条【国及び公共団体の賠償責任】

 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律(国家賠償法)の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

父「第15条は、いわゆる公務員と議員を混同して書いているので少しわかりにくいね。

第1項は、議員を選挙するのは国民だけが持っている権利だよ、という条文。日本国憲法上、「固有」という文言はここだけなんだ。固有の意味は、広辞苑では『その物だけにあること。特有。』ということ。他の「国民は」という条文では、国民以外については記述がないけど、ここだけは国民以外を排除しているんだ」

子「民主党も公明党も外国人参政権ということを言っているけど、問題ないの?」

父「参政権が選挙権を含むなら、明らかな本項違反だよ。信じられないね。

第2項はすべての公務員、議員によくよく読んでもらいたい条文。

第3項は、選挙権が男性にしかなかった時代や、納税額で決められていた時代もあったので、こんな条文があるんだ。

第4項は当たり前だけど、ひどい国では、政府が決めた候補者以外に投票するときは別室で、なんてことがあるらしいね。別室の投票箱は捨てられるし、別室から強制収容所へ直行らしい」

子「それでは選挙とは言えないわね」

父「第16条は、文書によって政府などに誰でもお願いできるということ。昔は、例えば佐倉惣五郎が将軍に直訴して死刑になったそうだけど、今はそんなことはないんだ。なお、この条文では、国民でなく「何人も」になっているところに注意しよう。外国人でも請願はできるんだ。

第17条は読んでわかる通りだ。今日はこれくらい」

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2009年6月25日 (木)

日本国憲法を読んでみよう(その6.国民権利義務その1)

「次は国民の権利と義務。どちらもほどほどが大切なんだ。条文が多いからまずは前置きみたいな条文を見てみよう」

第三章 国民の権利及び義務

第十条【日本国民の要件】
 日本国民たる要件は、法律(国籍法)でこれを定める。

第十一条【基本的人権の享有と性質】
 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

第十二条【自由・権利の保持義務、濫用の禁止、利用の責任】
 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第十三条【個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重】
 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第十四条【法の下の平等、貴族制度の否認、栄典の限界】

 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受けるものの一代に限り、その効力を有する。

父「第十条は「日本国民」の要件。この章では「国民」の権利義務について述べているから、じゃあ「国民」とは?という条文が必要なんだ。内容は「国籍法」にお任せだけど、国籍法で一番大切なことは、日本国民から生まれた子に国籍の取得を認める血統主義を取っている、ということ。話せば長くなるから、もう一言だけ。日本国籍の価値はとても大きいんだよ。例えば日本人は世界から信頼されている。その証拠に、外国の入国審査でも、日本のパスポートを見せればOK、という国も多いんだ」

子「経済大国だから信頼されているの」

父「違うよ。先人の方々が、それだけ素晴らしい行動をしてきた、ということなんだ。ぼくらはそれを汚すようなことをしてはならないね」

父「第十一条は大上段に振りかぶった感じの、基本的人権の宣言だね。侵すことのできない永久の権利、というのはすごいなあ」

子「当たり前のことじゃないの」

父「前も話したけど、憲法は国家を制約するものだ。だから、国家は国民の基本的人権を永久に守らなければならない、という規定だ。

でも、ちょっと問題がある。「永久に与えられる」と書かれると、憲法が約束しているんだから何もしなくても大丈夫、となりかねない。それでは権利は守られないんだ。

第12条は国民にそれを戒めている条文。国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない、というのはこれ以上の説明は不要だね

子「基本的人権の尊重は、憲法が約束するのではなく、国家が約束するのね。それで、国家が約束を守っているかどうか、国民も注意しなさい、ということね」

父「そうだよ。国家が約束を守らないとどうなるか。例えば、少し前に、名前は「人権擁護法案」だけど、実態は人権弾圧そのものの法律をを政府が作ろうとしたんだ。それに対し、心ある国民は立ち上がって、多くの議員のFAXがパンクするほど反対意見が殺到し、心ある議員はそれに応えて法律に反対したんだ。国民の不断の努力で人権が守られた例と言えるね。

さて、第12条はそれだけではない。「国民の不断の努力」の他に「濫用の禁止」と「公共の福祉のため」ということをはっきり述べているんだ。これを忘れて権利だけを主張する人が多いね」

子「権利を主張したらいけないの」

父「世の中に自分一人しかいないなら、なんぼでも主張すればいい。でも、みんなが住んでいる社会だ。誰かがむやみに権利を主張すると、他の誰かの権利を侵害したり、社会全体に大きな不利益となるんだ。詳しくは各条文を見る中で考えてみよう。

第13条も精神を述べた条文。大切な話ではあるけど、具体的な話ではないから、第11条から13条は前文としてまとめたほうがいいんだろうな。

第14条の1は「法の下の平等」を定めている条文。法律を適用する際に、国民は差別されない、ということ。どんな時代でも世の中には差別があるね。

こんな事件があったんだ。主役は、奈良市役所の職員で、しかも部落解放同盟の幹部。こいつは、仮病を使って2年以上役所を休んでいたんだ。もちろん給料は貰いながらだよ。しかも毎日のように役所を訪れ、奥さんの建設会社の営業活動を行っていたんだ。営業と言っても、部落解放同盟の名をちらつかせた脅しだったそうだ」

子「部落解放同盟ってなあに」

父「昔、「部落差別」と言って、言われ無き差別をされた人たちがいたんだ。その人たちが団結して差別をなくすために作った団体が解放同盟だよ。もともとは権利を守るための真っ当な団体だったんだろう。でも今では、このニュースを見る限り、「差別」と叫んで不当な利権を漁る団体にしか見えないね」

子「それとこの条文がどう関係あるの」

父「法の下の平等を確保するのは大変だってことだよ。差別をなくそうとすると、それを利用して不当な利権を漁る連中が必ず出てくるんだ。差別されている人は救済しなければいけないけど、不当な利権を狙う連中は排除すべき。なかなか難しいことだけどな」

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2009年6月16日 (火)

日本国憲法を読んでみよう(その5.戦争放棄)

父「さあ、いよいよ第9条、日本国憲法で一番有名な条文だね。内容は簡単なことだ」

第二章 戦争の放棄

第九条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】

1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

父「戦争しない国、という高らかな宣言だ」

子「戦争は嫌だわ」

父「お父さんも嫌だ。でも、この条文があれば本当に戦争にならないのかな?実は、前文にそのことが書いてあるんだ。第1回のときも出てきたけど、もう一度読んでみよう。

 平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。

世界中の国が平和を愛することがこの憲法の前提だよ、と言っているわけだ。でも、北朝鮮を信頼できるわけないのは、お前も知っている通りだね。前提が崩れているんだね」

子「戦争大好きな国がある、ということね」

父「そうだよ。それで軍備がなかったらどうなる?侵略されてしまうに決まっている。例えば、お金持ちの家の隣に泥棒の家があったとして、お金持ちの家の人が、お隣を信頼して警察もいらないしカギもかけない、と宣言したらどうなる?泥棒さんが喜ぶだけだ。つまり、この9条は、まわりに戦争大好き国家があれば、侵略戦争大歓迎!と言っているのと同じだよ」

子「9条が戦争を起こすということなの?日本は平和よ?」

父「それは日米安保条約があって、日本にアメリカ軍がいるからだよ。アメリカ軍は強いから、それと喧嘩しようと思わないだけ」

子「じゃあいいじゃない」

父「すべてはアメリカ様に守って貰えばいいか。情けないと思わないかい。それに、アメリカはいつ日本を見捨てても不思議じゃないよ」

子「アメリカが日本を見捨てるなんてことがあるの」

父「大東亜戦争では敵国だったんだよ。お人好しの国ではないアメリカが日本を守っているのは自分の国の都合で、日本のためではないんだ」

子「なんで日本を守ることがアメリカのためなの」

Map2 父「そりゃあ中国だのロシアだのが、太平洋に直接出てきたら、アメリカにとって脅威だからな。この地図をみてごらん。日本列島から台湾にかけて、中国のふたにみえないかい。中心の沖縄に米軍の基地が集まっているのも納得だろ」

子「こんな風に地図を見たことないからいままで気づかなかったわ。朝鮮半島にツンツンされて反っているようにも見えるわね」

父「ははは。そんなもんかも知れない。朝鮮半島は海の国である日本やアメリカと、陸の国である中国やロシアのせめぎあいになる場所なんだ。

話がそれたね、話を戻そう。日本は平和だと言ってたけど、国民が北朝鮮に拉致されたということ、平和とばかり言えないのじゃないかな」

子「誘拐や殺人は平和な国でも起こるわよ」

父「個人が起こせば犯罪者だ。でも、国家の命令で他国の国民を拉致したり殺したりすれば、その個人の犯罪ではなく、戦争を仕掛けたのと同じようなものだ」

子「国の命令で誘拐なんて、考えただけでも怖いわ」

父「軍備なしで済む世の中は理想だけど、そんなのできるわけない。自衛力はできるだけ増強して、いつでも強力な反撃ができるようにしておく。今の人類の知恵では、平和を保つにはそれしかないんじゃないかな」

子「残念なことね」

父「ほんと、残念なことだね。お父さんはとにかく戦争が嫌だから、こんな条文は不要だと思うんだ。戦争大好きな人たちが大喜びするのが憲法9条なんだよ」

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2009年6月11日 (木)

日本国憲法を読んでみよう(その4.国民主権)

父「いままで天皇陛下について憲法の規定を見てきたけど、憲法第1条では、他に国民主権ということを謳っているね」

第一条【天皇の地位・国民主権】

 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

父「主権の存する日本国民、とは、どういう意味だろう」

子「国民が主権者、ということじゃないの」

父「そりゃあそうだけど、この「主権」というのは何のことかわからないね。意味としては、政治を行う人たちを決めるのは選挙権を有する国民、ということかな。憲法前文を見ると、

ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。

とあるわけで、これが日本国憲法の言う国民主権だ。でも、わかりにくいし、危険な考え方なんだ」

子「国民主権の何が問題なの」

父「政治家が権力を行使できるのは、国民が信託したから。でも、主権者が1億人以上の集団だと、誰に対して責任を取ったらいいんだろう。あまりにも漠然としているから、全員に対して責任を取る気になるかい、せいぜい後援会員の顔を思い浮かべるくらいではないのかな。もしくはテレビカメラの前でかっこつければいい、とか。制度上の国民主権では、政治家は人気取りに走るだけの無責任野郎になりやすいんだ」

子「じゃあどうすればいいの」

父「日本的な考えでは、神様はどこにでもいる。でも、なにもないところに拝むことは心情的に難しいから、神様の象徴として、神社や神棚があるんだ。拝殿や神棚に向かえば拝みやすいし、神社に対して悪いことをしようという輩は少ないよね。同じように、国民を象徴する何者かが必要で、それは天皇陛下以外にはあり得ないんだ。

国民を象徴する天皇陛下が主権を持つということが、日本の国柄では真の国民主権につながる。真の主権者は国民だけど、天皇陛下に「神社」のお役目を果たしていただいたほうが、政治家が責任感を持って仕事する。お父さんはそんな風に思うよ」

子「天皇主権とは、政治家が国民の象徴である天皇陛下に対して責任を取る、ということなのね」

父「そうだよ。そもそも憲法とは、政府が国民に対して責任を持つためのもの、政府の行動を規定し制限するものなのだから、少しでも無責任にならないようにすべきなんだ」

子「憲法って国民に対する決まりではないの」

父「国民に対する決まりは普通の法律なんだ。本来は、憲法とは、政府や公務員が勝手に法律を決めたり、変な行政をしないように制限するものなんだよ。国民の権利義務が規定してあるのも、政府が国民の権利を必要以上に制限したり、不要な義務を課したりさせないための条文なんだ」

子「難しいね」

父「新しい制度で「裁判員」って知っているよね。国民は、裁判所から指名されたら、裁判員をする義務があるんだ。でも、憲法に規定していない義務なんて明らかに憲法違反だとお父さんは思うよ。憲法違反かどうかを決める裁判所が憲法違反の制度を作ったのは、反則というものだろう」

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