日本国憲法を読んでみよう(その12.国民権利義務その7)
父「次は犯罪と刑罰に関する条文だ。刑罰を科すことは基本的人権を奪うことだから、法律に定められた手続きを踏んで慎重にすべきで、これも大事なことだね」
第三十一条【法定手続の保障】
何人も、法律(刑事訴訟法等)の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
第三十二条【裁判を受ける権利】
何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
第三十三条【逮捕に対する保障】
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
第三十四条【抑留・拘禁に対する保障】
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第三十五条【住居侵入・捜索・押収に対する保障】
1
何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2
捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
第三十六条【拷問及び残虐な刑罰の禁止】
公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁止する。
第三十七条【刑事被告人の諸権利】
1
すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2
刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3
刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
第三十八条【不利益な供述の強要禁止、自白の証拠能力】
1
何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2
強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3
何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
第三十九条【刑罰法規の不遡及、二重刑罰の禁止】
何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
第四十条【刑事保障】
何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律(刑事補償法)の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
父「31条は罪刑法定主義。近代法の大原則だ。もっとも、大東亜戦争の連合国による復讐劇、いわゆる「東京裁判」では事後法濫発だったから、西欧諸国は原則とも思っていないのかも知れないけどね
32条は裁判を受ける権利。裁判なしで刑を科せられることはない、ということ。交通違反の切符を切られたときでも、不満なら裁判を起こすことはできるんだ。もっとも、そんな面倒なことは普通はしないけど。
33条から35条は逮捕のためには令状が必要という原則。令状なしで家宅捜索したり逮捕できるような法律は明らかな違憲だけど、人権擁護法案ではそれをやろうとしているね。どうも「護憲」を掲げる人に限って憲法を無視する傾向にあるようだな。
眠くなってきただろうからこの辺にするけど、死刑が36条の「残虐な刑罰」にあたるかどうかは議論のわかれるところ。現在の法解釈では、たとえばノコギリ引きのような苦痛を与え続ける刑罰は残虐だけど、通常の死刑は応報刑であり残虐な刑罰ではない、ということらしいね。まあ、常識的な判断だと思うよ」
子「普通の生活をしている限りこれらの条文は関係ないから眠いわ」
父「そんなことはない。いつ間違って逮捕されるかわからないし、被害者になる可能性だってある。国民として知っておくべきものだよ。
やっとこれで権利義務が終わった。最近は、加憲とか言って、不足している権利を書き加えるべきだ、と主張する人がいるね。たとえばプライバシーの権利とか。でも、あんまり権利ばっかり増えるのはどうかと思うね。
それより、国民としてごく当たり前な、国家に忠誠を誓う義務、国旗国歌に敬意を表する義務などは最低限必要だろう。政府が憲法を守る主体だから、政府が憲法を守ろうとしないならそれを批判するのは当然のこと。政府を批判する権利は絶対に守られるべきだ。しかし、国家を転覆させようだの他国に売り渡そうだのいう権利が認められるはずもないし、我々が日本と日本人を大事にすべきことは当然だ。そういう根本を忘れた憲法はおかしいね」
子「なんでそうなっていないの」
父「そりゃあ日本を占領していたアメリカが作った憲法だからね。日本二度と立ち上がらないようにしたかったんだろう。独立してからも後生大事にするようなものじゃない。日本国憲法を廃棄しなかったのは諸先輩方の怠慢だ」
子「そうじゃないと思うわ。日本を大事にすることは憲法に書くまでもないことでしょ。そんな当たり前のことを、わざわざ憲法に書くなんておかしいわ」
父「(絶句)…まさにその通りだね、一本取られたよ。でも、当たり前すぎて誰も口にしないのをいいことに、無茶苦茶をやる連中がいるんだ。この前、日の丸を切り貼りして自分らの旗を作って、しかもそれを指摘されたときに、神聖な党のシンボルマークをこんな作り方したのが悪かった、と国旗を切り裂いたことを屁とも思っていない奴がいたね。それがある政党の党首で次の総理大臣になる可能性が高いんだから、どういう国かと思うよ。こんな連中を育てたのは日本国憲法なんだ、やっぱり破棄するしかないね。
次回は国会についての条文。その後は内閣や裁判所など、国の制度を決めた条文が続くから見ていこう」
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コメント
是非、練馬のんべさんの「日本国憲法~」シリーズを
公民の教科書に載せて欲しいものです。
非常に分かり易く、かつ視点をキッチリ押さえています。
それしても、お「子」さんの成長ぶりには目を見張るものがあります。
そして、今回はついにお「父」さんをやりこめるまでに至りましたか。
子供がいない私には概念でしか分かりませんが、清く正しく
子供が成長すると、父親としてはさぞかし嬉しいものでしょうね。
投稿: ハーグ竹島 | 2009年8月20日 (木) 23時03分
ハーグ竹島さま
過分なお褒め、有り難うございます。
仮想問答ではありますが、うちの子ですら、これくらいは突っ込みそうです。優秀なお子さんならこんなものではないのは確実、組合活動にお忙しい某N教組のセンセイ方よりは遙かに勉強しているでしょう(笑)
投稿: 練馬のんべ | 2009年8月20日 (木) 23時22分
始めまして、南風海治郎と申します。
父ちゃんで旦那で息子で孫の4世帯家族の長であります。
博士の勉強会より馳せ参じました。
私も日の丸を子供達の為に取り返したいと思っております。
ちょいと下品ですが、今後とも宜しくお願い申し上げます。
投稿: 南風海治郎 | 2009年8月22日 (土) 21時09分
南風海治郎さま
勉強会参加、まことにお疲れ様です。今後ともよろしくお願いします。
投稿: 練馬のんべ | 2009年8月22日 (土) 22時58分