教育出版「中学社会歴史」批判その3(古代その3)
今日で古代は終わりです。この教科書、読むのがつらいですね。子供を洗脳するならもっと洗練したものを作ればいいのに、これでは我慢大会で逆効果ではないかな(苦笑)
第2章
3.古代国家の発展
マル1.栄える奈良の都(平城京と貴族の繁栄)
マル2.農民の暮らしと開墾(苦しむ農民と社会の変化)
マル3.貴族の政治(平安京の繁栄)
マル4.日本文化の誕生(大陸風文化から国風文化へ)
ひとびと探検隊 古代に生きた人々
「都で暮らす人々、地方で戦う人々~長屋王と阿弖流為・田村麻呂」
ワールド・チャレンジャー 世界の古代遺跡のなぞ
学習のまとめ 第2章 原始・古代の日本と世界
3.古代国家の発展は、あまり面白くないし、内容が薄すぎてあまりコメントする気にもならないけど、少し見てみましょう。
マル2では、農民がいかに税金で苦しんでいたか、というのが強調されすぎているのが気になります。
マル3には「朝廷と国司」という項目があり、「地方の政治は国司にまかされ…国司の中には農民から租税をしぼり取り、自分の収入を増やす者もあらわれました」という表記があります。「しぼり取」るという表現には、悪意が感じられます。
また、国司がいつから地方政治を仕切るようになったのか、誤解を生みそうです。その前の項目に「桓武天皇は国司の不正を取り締まって地方の政治を引き締めました」とありますが、それ以前には記述がなく、国司が律令の役人であることがわかりません。
マル4も内容が薄い。この薄さでは議論以前です。
次の「ひとびと探検隊」も、なんだかなあ。
前半は「長屋王の暮らし」。大きな権力を持って、「現代人もうらやむような生活を楽しんでいた」、そこまではいい、「長屋王の暮らし」でしょう。ところが、その後に、729年に攻められて自害。妻子も自害。藤原四兄弟が力を伸ばしたが天然痘で死去、長屋王ののろいでは、とうわさになった。この記述、「長屋王の暮らし」でしょうか…
後半は「阿弖流為(アテルイ)の抵抗」。阿弖流為は、最近の教科書では人気の人物です。「蝦夷は自らの土地と名誉を守るため、阿弖流為らをリーダーに団結…」という蝦夷側の史観を、このようなコラムで紹介するのは一つの見識と思います。
ワールドチャレンジャーはようわかりません。ギザピラミッド、ストーンヘンジ、キトラ古墳、ナスカ地上絵、マチュピチュ(インカ)が取り上げられています。世界史に興味をもとう、というページでしょうか。あんまり関係ないような…
学習のまとめ(左の写真、クリックで拡大)には、さりげなく「身分差のない社会→貧富・身分の差が生まれる→…」とマルクスっぽいことが書いてありました。アジア、世界もすごい切り方。世界はすべてイスラムらしい…?!まあ、どうせこのページは誰も読まないでしょうけど(笑)
ここまでで古代は終わり。原始から平安時代までの登場人物(本文は大字、欄外(系図除く)は小字)に出てきた人物は、孔子、始皇帝、シャカ、卑弥呼、蘇我氏(名前は出ない)、推古天皇、聖徳太子、小野妹子、天智天皇、藤原鎌足、天武天皇、持統天皇、マホメット、阿倍仲麻呂、鑑真、山上憶良、桓武天皇、坂上田村麻呂、藤原氏、道長、頼通、最澄、空海、聖武天皇、紀貫之、紫式部、清少納言、それに上記の長屋王、藤原四兄弟、阿弖流為。
内容の薄さは、この登場人物の少なさからも想像していただけるのでは、と思います。最低でも、物部氏、馬子、蝦夷、入鹿、隋の煬帝、人麻呂、家持、道真、くらいは登場させそうなもの、と思いませんか。
その点、自由社の新しい歴史教科書は内容が倍くらい濃い。たとえばコラムの日本神話の紹介で、イザナギイザナミさまから神武東征まで載っています。
次回は中世。遅々として進みませんが、まあのんびり連載します。
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コメント
道真は、扶桑社版では載っていたのに
自由社版でなぜか削られてしまったんですよね。
残念です。
投稿: | 2009年7月 6日 (月) 17時16分
?さま
さすが、よくご存じですね。実は私もこの記事を書く上で、扶桑社をまず見て、国風文化の項で、道真が遣唐使を白紙(894)に返した(笑)趣旨の記述を確認し一安心、ところが自由社版では「遣唐使が廃止された」と他人事のような記述、唖然としました。非常に優れた教科書なのになんででしょうかね。
投稿: 練馬のんべ | 2009年7月 6日 (月) 21時30分