改造内閣、各紙社説は薄っぺら
『改造内閣発足―「脱安倍色」で、さて何をする』(朝日)
『安倍改造内閣 必要な政策の遂行に邁進せよ』(読売)
『内閣改造 ぼやけてきた安倍カラー』(毎日)
『内閣改造 総力挙げ改革路線貫け ねじれ国会へ重厚な布陣だ』(産経)
政治の人事関係にはのんべはまことにうとい。各紙社説を一通り読んでみるのがまあわかりやすいかと。
要するに、安倍首相の色を薄めて、各派閥の長を起用し挙党態勢(除く谷垣派)を整えた布陣、ということでしょうか。脱「お友達」で民主党との関係重視、ということも。それに厚労相には弁が立ちそうな舛添氏、総務相に地方の疲弊ぶりを知っている増田氏などが目玉らしい…うーん、それくらいならいかに政治にうといのんべでもわかります。もう少し突っ込んだ社説であってほしい、というべきか、社説に期待した私が間抜けだったのか…(追記:のんべは今日は夏休み、念のため朝日と産経を隅々まで読んでみたけどつまらん…)
一番気になることは、朝日サマがやや好意的なこと。朝日サマがいつものようにアジビラの如く批判してくれれば安心できるのですが(笑)
このメンバーの善し悪しはやっぱりよく分かりません。のんべはやや疑問に思いますが(朝日で草野厚氏が「安倍首相を支持する右よりの人はがっかり」の旨を書いたけどその通り(笑))、決めたものは仕方ない。お手並み拝見です。できれば、自民も民主もまた混乱して、政界再編で大保守政党が生まれてくれればいいのですが…
(続きは記事の保存です、当面はリンク先をご覧下さい)
『改造内閣発足―「脱安倍色」で、さて何をする』(朝日)
安倍改造内閣がようやく発足した。参院選挙での歴史的惨敗から1カ月。退陣を求める民意や自民党内の批判を押し切っての出直しである。
外相、財務相、防衛相などの主要な閣僚や党三役に、派閥の会長をはじめ経験豊かなベテランを多く配した。挙党態勢づくりに腐心したとも言えるが、何よりも首相の続投に対する党内の批判を封じ、出直し安倍政権の船出をスムーズにするのが目的だったのだろう。
来年の洞爺湖サミットの準備などに当たる外相には町村元外相、財政再建の重荷を背負う財務相に額賀元防衛庁長官、テロ特措法の延長などを抱える防衛相には高村元外相をそれぞれあてた。
●薄れる首相の存在感
昨秋の党総裁選で対立した谷垣禎一元財務相の派閥からは、今回も入閣者はゼロだった。だが、それ以外の派閥からはまんべんなく起用した。選挙後、首相の続投を批判した舛添要一参院政審会長を厚生労働相に起用したのも、党内融和への配慮と見られる。
一方で、前内閣から留任した閣僚は甘利経産相ら5人もいる。「人心を一新したい」と大見えを切ったわりに、新鮮味を欠くのは否めない。
党内外の批判を浴びた「お友だち」からの起用は、党幹事長代理から登用した石原伸晃政調会長と、留任した渡辺行政改革担当相くらいにとどめた。
「美しい国」「戦後レジームからの脱却」をはじめ、首相と同じ思想信条で結ばれた中川昭一政調会長や高市沖縄・北方相らは、はずれることになった。官房長官、政務の副長官、首相補佐官らの官邸スタッフも一部を残して入れ替わり、売りものにしてきた「チーム安倍」は解体された。
党の実力者を結集したことで、首相自らの存在感が薄れるのは避けられない。だが、現在の窮地から脱して出直し政権を軌道に乗せるには、プライドや安倍カラーなどにこだわっている場合ではない。そんな危機感が、閣僚や党役員の顔ぶれからくっきりと浮かび上がる。
教育再生と公務員制度改革で担当閣僚を留任させたことで、なんとか「安倍色」継続への思いをにじませた。
●新しい目標を語れ
とはいえ、「第2幕」を迎えた安倍内閣が反転攻勢のチャンスをつかみたいなら、内向きに首をすくめるだけでは世論の支持は期待できまい。
首相にとって大切なのは、この人事の先にある「次の一歩」である。
選挙の惨敗を受けて、首相は「反省すべきは反省する」と語った。ならば「反省」の中身は何なのか。安倍カラーを脱するのは賢明だが、ではこの改造内閣で目指す新しい政策目標は何なのか。首相はそこを明確に語らなければならない。
その意味で、増田寛也・前岩手県知事を民間から総務相に起用したことに注目したい。地方分権や都市と地方の格差是正などを担当する特命相も兼ねる。
増田氏は「改革派知事」として補助金廃止や自治体への税源移譲を求める旗を振り、安倍政権でも地方分権改革推進委員会の委員長代理などを務めてきた。
分権改革には霞が関の役所の抵抗が強い。増田氏が補助金の半減、地方交付税の抜本改革といった持論を貫こうとすれば、政府内での衝突は必至だろう。公共事業や地方への補助金の削減に反対が強い自民党ともぶつかるに違いない。これをだれが支え、政権の新たな看板にしていくのか。
内閣の要である官房長官にベテランの与謝野元経済財政相をあてたのは、「少年官邸団」などと揶揄(やゆ)された首相官邸スタッフの強化が一つの狙いだろう。
だが与謝野氏は、首相と中川秀直前幹事長が主導してきた経済成長重視の「上げ潮戦略」に財政再建を頼ることには懐疑的だった。与謝野氏が霞が関、とりわけ財務官僚の厚い支持を得てきたのはそうした面もあってのことだ。
与謝野氏の起用は、安倍政権の経済政策の路線を変えることにつながるのか。秋からの税制改革論議では、消費税の税率アップ問題が焦点になると予想される。額賀財務相ら経済閣僚を含め、どこが司令塔になるのか。
●民主党との総力戦
首相の経験不足や求心力の乏しさを補うのが、今回起用されたベテラン組に求められる役割だろう。懸案のテロ特措法の延長をはじめ、こうした政策課題をめぐって、新陣容の総力が試されることになる。
首相はきのうの記者会見で、「政治とカネ」の問題で閣僚らに疑惑が発覚した場合、「十分な説明ができなければ去っていただく」と述べた。当然のことであり、記憶にとどめておく。
これからの国会は民主党など野党との折衝が死活的な重要性を持つ。これまでのように、与党の数の力を頼んでの強引な政治はやりたくてもできない。
その最前線に立つのは麻生太郎幹事長、石原政調会長、二階俊博総務会長ら党側の幹部たちだ。参院選後、いち早く首相の続投を支持した面々でもある。
だが、新三役はいずれもこれまで内閣や党の要職にいた人を、いわば「席替え」したに過ぎない。これで、先の通常国会での乱暴な国会運営を「反省」したことになるのか。これでは、民主党など野党側も態度を硬くせざるを得まい。
民主党は31日に役員人事を行い、小沢代表を支える執行部体制を手直しする予定だ。対するは、ベテランを動員して総力戦の陣容で臨む安倍政権。いよいよ2大政党ががっぷり四つに組む舞台の幕が開く。
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『安倍改造内閣 必要な政策の遂行に邁進せよ』(読売)
新体制の下での、安倍政権の再出発である。安倍首相にすれば、視界不良の荒波の中を、改めて航海に出る思いだろう。前途は、多難だ。
安倍改造内閣の狙いは、明白だ。次期衆院選に向けて、先の参院選での歴史的大敗で大きく揺らいだ政権を立て直し、求心力を回復する。与党が過半数割れした参院で第1党となった民主党との政策の主導権争いに対処する……。その態勢の構築だ。
自民党の要である幹事長に就任した麻生前外相は、安倍首相と政治理念や基本政策が共通し、参院選大敗後、いち早く首相続投を支持した。自民党内になお安倍首相への不満がくすぶる中、信頼する麻生前外相の幹事長起用は、政府・党一体の態勢を作る狙いだろう。
今後、民主党との政策調整の責任者となる石原伸晃政調会長は、1998年秋の臨時国会で民主党とも協調して金融危機に対処し、「政策新人類」と言われた。二階俊博総務会長は、かつて小沢民主党代表と長く政治行動を共にし、民主党内にも太いパイプを持つ。
衆参ねじれという新たな政治構図の下で政策を推進するには、出来る限り、民主党の協力を得る必要がある。自民党執行部の主要人事は、民主党との調整も重視した布陣と言える。
政権を担当する以上、政治状況がどうあれ、必要な政策は着実に遂行しなければならない。
◆重要な民主党との調整◆
改造内閣では、「お友達内閣」「論功行賞内閣」などと揶揄(やゆ)された陣容は、大きく変貌(へんぼう)した。挙党体制作りにも一定の配慮をしつつ、派閥領袖(りょうしゅう)を含め、実績、能力のある人材を起用したことに、政策に取り組む「仕事師内閣」として邁進(まいしん)することを目指す意図は見える。
内閣の要の官房長官に起用された与謝野馨・元経済財政相は、党内有数の政策通だ。内閣のスポークスマンとしてだけでなく、政府内や政府・与党間の政策調整に中心的な役割を果たすことへの期待がうかがえる。
外交・安全保障では、北朝鮮の核をはじめ日本の安全保障環境の悪化に対処するために、日米同盟を強化しなければならない。
国際社会の責任ある一員として、国際平和協力活動に積極的な役割を果たす上で、11月1日で期限切れとなるテロ対策特別措置法の延長は、秋の臨時国会の焦点ともなる、当面の最重要課題だ。
いずれも派閥領袖である町村信孝・元外相を外相に、高村正彦・元外相を防衛相に、それぞれ起用したのも、そうした課題の重要性を踏まえたものだろう。
◆強化すべき危機管理◆
安倍首相は、「改革や新経済成長戦略は引き続き進めていかねばならない」と言う。甘利明経済産業相や大田弘子経済財政相の留任は、政策継続の意思を示すものだ。経済力が日本の国力の基盤である以上、当然である。
自民党内には、地域格差や雇用格差など、小泉前首相の構造改革の負の側面が参院選大敗の一因だったとし、その修正を求める声がある。今後、来年度予算編成に向け、地方への予算配分増など、自民党内の圧力が強まる可能性がある。
格差是正も担当する総務相に増田寛也・前岩手県知事を起用したことに、地方分権などと併せ、地方対策を強化する狙いもうかがえる。次期衆院選に向けた対策という側面もあるのだろう。
だが、行き過ぎた構造改革の一定の「修正」は必要だとしても、それが「迎合」になってはなるまい。改革の停滞や後退、ましてバラマキになるようなことがあってはならない。
先の自民党の参院選総括では、前内閣で相次いだ閣僚の事務所費問題や失言に対する安倍首相の対応の甘さを指摘し、今後の内閣に、危機管理能力の強化を求めている。
安倍改造内閣として、当然、留意すべきことだ。だが、今後の危機管理は、単に個別の閣僚の「管理」にとどまるものではあるまい。厳しい政権運営、政策対応を余儀なくされる状況の下では、政権運営イコール危機管理という意識で臨むことが必要になる。
◆混乱すれば大連立も◆
今後、改造内閣が順調に動き出し、安倍首相の自民党内での求心力が回復しても、さらに次期衆院選で与党が過半数を確保して政権を継続しても、展望が開けるわけではない。参院での与党過半数割れ、民主党第1党という構図には、何の変化もないからだ。
しかも、こうした状況は、6年後の次々期参院選以降、10年近くもの間、続く可能性がある。
この間、自民、民主両党の競合、対立によって、国政の停滞と混乱が続くようなことになれば、日本の国益が大きく損なわれかねない。国民生活にも重大な影響を与える。
外交・安全保障は無論、国内政策では、財政再建、年金をはじめとする社会保障制度の再構築、財源としての消費税率引き上げを中心とする税制改革など、緊急に取り組むべき課題が山積している。
自民党内には、こうした課題に対処するために大連立も必要ではないか、とする声もある。国政運営が混乱したりすれば、そうした声が一層、強まることもありうるのではないか。
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『内閣改造 ぼやけてきた安倍カラー』(毎日)
安倍改造内閣が27日発足し、合わせて自民党三役も入れ替えとなった。参院選で大敗しながら安倍晋三首相が早々と続投を表明してから約1カ月。今回の人事で失敗すれば後がないことは首相自身が十分承知だろう。しかも、「衆参ねじれ国会」の中、今後は民主党など野党との戦いが中心となる。ベテランを配置し、国会論戦に備えるという意図は明確に見える人事だ。
だが、これで安倍政権が浮揚するかと言えば無論、未知数だ。バランス重視の結果、この政権が今後一体、何を目指していくのか、焦点がぼやけてしまった印象も強いからである。
反省すべき点は反省する--。参院選以来、首相はそう繰り返してきた。昨秋の政権発足時には身内を多く起用し、「お友達内閣」とやゆされ、閣僚の「政治とカネ」の問題も相次いで浮上した。自民党も先の参院選については「国民から指導力、統治能力に疑問を呈されたのではないか」と厳しい総括をしたほどだ。
「お友達」は十分反省
そうした反省は生かされたのか。その意味では注目されていた官房長官人事で、「お友達」の代表格だった塩崎恭久氏を代え、無派閥でベテランの与謝野馨氏を起用したのは一種のサプライズだった。与謝野氏は、経済成長と歳出削減を優先し、増税は極力抑えるという安倍内閣の経済成長路線とは一線を画し、財政再建重視派とみられてきたからだ。
首相は与謝野氏が政策に通じていることに加え、そのバランス感覚や、党内に敵が少ない点などに期待したと思われる。官房長官は首相の出身派閥・町村派からの起用も取りざたされていたが、首相は「派閥重視に逆戻りした」との批判を恐れたのだろう。
もちろん、消費税増税をどう考えていくのかなど、目指す経済財政政策に関しては、首相と与謝野氏との間ですり合わせる必要がある。また、これまで安倍内閣は霞が関の官僚と対決している姿を演出することで、政権浮揚を図ろうとしてきたが、効果を上げたとは言えない。今回、首相補佐官を減らした点も含め、中央省庁との関係をどう再構築するかも「安倍・与謝野」官邸の課題となろう。
塩崎氏より年長になったとはいえ、与謝野氏も党内に確たる基盤がないという問題もある。麻生太郎幹事長をはじめ、自民党の新三役も同様である。こうした事情を踏まえ、安倍首相が町村派会長である町村信孝氏を外相、高村派会長の高村正彦氏を防衛相、津島派の次期首相候補と言われる額賀福志郎氏を財務相に起用したのは、派閥への配慮があったことは否定できない。
ただ、今回は挙党体制を整えれば済むわけではない。そこに首相の苦しさがある。
臨時国会では、さっそく内閣の命運がかかるとさえいえるテロ対策特別措置法の延長問題が控えている。延長反対の立場を示している民主党に国会でどう対応していくか。外相経験者の高村氏を防衛相にすえたのは国会答弁で行き詰まれば、途端に内閣が瓦解するという危機感からだろう。
参院選後、首相続投批判を繰り返した舛添要一氏を厚生労働相に起用したのも批判勢力を取り込む理由にとどまらず、引き続き大きな焦点となる年金問題などでの「答弁力」に期待したはずだ。増田寛也前岩手県知事の総務相起用は、地方分権に精通している点に加え、参院選で指摘された「地方の自民党離れ」を食い止め、地方重視の姿勢を示すためでもあろう。
このほかにも内外の課題は山積している。
外相再登板となる町村氏は小泉前内閣での外相当時、中国などの理解を得られず、日本の国連安保理常任理事国入り構想を進められなかった経緯がある。北朝鮮問題をめぐる6カ国協議では今、日本が置き去りになるのではとの懸念がある。核と拉致問題をどう解決していくのか。現状では道筋がまったく見えていないのが実情だ。
事務次官人事でお粗末な内紛が起きた防衛省には、テロ特措法に加えて、沖縄の普天間飛行場移設問題も控えている。
今回の内閣改造前に政治資金収支報告書を訂正する自民党議員が相次いだことも国民は忘れないだろう。これまでいかに、ずさんな資金管理をしてきたかの表れであり、今回の入閣組の中からも問題が浮上しないとも限らない。その場合、一気に改造内閣の評価は下がることになるだろう。
支持率次第で退陣論も
しかし、何より最大の課題は首相自身が何を目指すのか、ということではないだろうか。
首相は記者会見で「美しい国」「戦後レジームからの脱却」路線について、「戦後作られた仕組みを原点からさかのぼって改革していく方針に変わりはない」と語り、教育や公務員制度改革を挙げたが、憲法改正は口にしなかった。これも「生活」を前面に掲げた民主党に負けた反省なのだろう。安倍色は明らかに薄まっている。
世論に謙虚に耳を傾け政策の優先順位を変えることは大いにあっていい。だが、それに代わる新しい「旗」を掲げているかといえばそうではない。これでは「安倍首相でなくても構わない」との声が早晩、与党内からも出てくる可能性がある。人事を経ても安倍政権が瀬戸際の状況にあるのに変わりはないというべきである。
自民党内には次の衆院選を待たずに総裁選を行い、首相交代したうえで衆院解散・総選挙に臨むべきだとの声もくすぶっている。首相の頼りはやはり国民の支持だ。今回の人事を、そして臨時国会での与野党論戦を国民がどう評価するか。支持率が一向に回復しないようだと、退陣要求は再び強まることになるだろう。
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『内閣改造 総力挙げ改革路線貫け ねじれ国会へ重厚な布陣だ』(産経)
政権の立て直しに、派手さよりも手堅さを重視した布陣といえよう。
改造内閣や自民党新三役の顔ぶれからは、がけっぷちの安倍晋三首相が何とか踏みとどまり、与党内に幅広く人材を求めながら、改革路線を継続していこうという決意が読み取れる。
参院選大敗から約1カ月を経て、内閣支持率や首相の求心力に回復の兆しはまだない。人心一新をもってしても、厳しい再出発であることに変わりはない。
◆ベテラン起用で安定感
首相は改造を機に、新しい国づくりを再スタートさせると述べた。参院選1人区の惨敗などを背景に、与党内では地域間格差への対応を求める圧力が強まっている。首相の基本路線に揺らぎがあってはならない。もしそうなれば、続投の意義は失われる。
主要閣僚では、内閣の要役となる官房長官を塩崎恭久氏から与謝野馨元通産相に代えたほか、外相に町村信孝、防衛相に高村正彦の両元外相を起用し、内閣の危機管理や外交・安全保障担当にベテランを配置した。
安倍内閣発足後、事務所経費や失言などで閣僚が辞任する度に、首相や内閣官房の対応のまずさが指摘され、参院選にも悪影響を及ぼした。
与謝野氏は組閣後の会見で、「地味でも着実に仕事をしていく」と基本姿勢を述べたが、若い首相を支える観点からも、政策通で党務にも通じたその手腕が期待される。
日米同盟の維持、強化を図りながら「価値の外交」「主張する外交」を継続する意味で、外相経験のある町村、高村両氏の起用は安定感を与える。秋の臨時国会では、テロ対策特別措置法の延長が焦点となるが、それを見据えた人事ともいえよう。
政策通で「族議員」でない舛添要一氏を、年金問題などの対応が急務となる厚労相に起用したのも人事の柱の一つだ。公然と首相批判を展開していた人物を登用した意外性もある。
全体としては、町村、高村両氏や額賀福志郎財務相の起用に象徴されるように、各派の領袖クラスを閣内に取り込むことなどで挙党態勢を図った。
派閥の均衡うんぬんよりも、要所にベテランを置くことで、若さと稚拙さが同居していた前内閣の印象を拭(ぬぐ)うねらいがあったと受け止めたい。
◆力点置いた「対民主党」
自民党三役人事では、外交政策などで首相と政治路線が重なり合う麻生太郎氏を、党再生の先頭に立つ幹事長に起用した。総務会長には、国会運営や選挙対策に通じ、かつて新進党時代に民主党の小沢一郎代表と行動を共にした二階俊博氏を充てた。政調会長には、平成10年の「金融国会」で、金融再生関連法をめぐり民主党との協議にあたった石原伸晃氏を起用した。
3氏とも、参院第一党となった民主党との政党間協議に取り組む考えを示しており、衆参のねじれ現象に対応して政策運営にあたるシフトだ。
もっとも、民主党の小沢代表は話し合い路線はとらず、徹底して安倍政権を弱体化させ、解散・総選挙に追い込む戦術をとるものと予想される。
その意味で、与野党協議の態勢は組むにせよ、重要な政策、法案で政府・与党が譲れない点については、ベテラン閣僚が明確に答弁し、必要な反論を行うことが重要である。
テロ特措法の延長に民主党が反対を表明していることについて、町村氏が就任早々、民主党は方針を転換すべきだと主張したのは適切である。
民間人の増田寛也元岩手県知事を総務相に起用し、地方対策重視の姿勢も示した。地方分権に取り組み、改革派知事と呼ばれた人物だが、担当分野の広い重要閣僚に抜擢(ばってき)したのは注目される。問題は、地方重視を名目に、公共事業を通じた対策に与党内の関心が集まっていることだ。
厳格な財政再建路線に立つ与謝野氏が閣内に入り、石原政調会長は従来型の公共事業による地方対策は効果が薄いと明言する。しかし、麻生幹事長や二階総務会長を含め、公共事業に一定の効果を期待する意見は多い。
憲法改正への取り組みなど、新しい国づくりを含む構造改革路線を貫けるかどうか、参院選大敗への反省という文脈で安倍首相は進むべき道をあいまいにしてはならない。
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コメント
安部新内閣の布陣は、???ですが、麻生幹事長、町村外相、伊吹文科省あたりは賛成です。
少子化担当大臣が不安!
投稿: NS大川 | 2007年8月28日 (火) 20時34分
NS大川さま
上川陽子さんとは何者なんでしょうね。全然知りません。
ご本人のHP(※)の『わが国がめざすべき「少子化対策」の本当のねらい。それは「子どもは社会の宝」、「家族の、そして社会全体の幸せのシンボル」という意識を育てること。そうした意識が国民の間に共有されない限り、どんなに強力な「少子化対策」も決してホンモノにはならないだろう。この点を最後に強調しておきたい。』
(より)を文字通り取れば「家族がいちばん」と意識を共有できるのですが、このHPではスウェーデンの事例などと比較しているところが多いのは不安です。
※ http://www.kamikawayoko.net/media/2003/2006040401.html
投稿: 練馬のんべ | 2007年8月28日 (火) 21時37分
挙党体制とは言え、町村派から外相のみ、保守色稀薄化、にはがっかりしました。 せめて代理、副、など、組織のNo.2、3に、価値観議連などから登用し、次代の保守を鍛えてほしいです。
また、浪人される中川元農相は、党内のみならず国内外に支持を広げ、麻生幹事長の次期総理を狙って頂きたいです。 保守の、エースの保険として。
投稿: アル中やもめ | 2007年8月28日 (火) 22時10分
アル中やもめさま
確かに仰せの通りです。あまり間抜けなことはしそうもないけど安倍氏らしさがない、という批判は多そうです。
また、確かに中川(酒)さんは閣外に出したのは仰せのような意味がありそう、安倍首相の配慮かも知れませんね。
投稿: 練馬のんべ | 2007年8月28日 (火) 22時53分