やっぱり面白い社説読みクラーベ
やっぱり4紙社説を読み比べると面白いですねえ(笑)。 『首相の訪印―価値観外交のすれ違い』(朝日)
『日印首脳会談 重層的な「新次元」の関係を築け』(読売)
『日印関係 戦略的協調への第一歩に』(毎日)
『日印首脳会談 戦略的協力さらに育てよ』(産経)
朝日サマは、要するに中共サマだけが日本の宗主国なので、他の国と単独外交などだめです、安倍首相は朝日サマの言うとおりにしなさい、という非常に大所高所に立った、まるで月の上にでも立ったかのような素晴らしいご意見(笑)、さらに、インドの核は絶対だめですよ、でも中共の核には知らんぷり、とも。実に分かりやすい。さすがは人民日報です(大笑)
毎日サンはインドも大切です、中共サマも大切です、と一歩腰が退けています(笑)
読売と産経は安倍首相訪印を高く評価しています。まあ、それが日本人として常識的だよなあ…
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『首相の訪印―価値観外交のすれ違い』(朝日)
米国とインド、それに豪州。自由と民主主義という価値観を共有するこれらの国と連携して事に当たる。それが安倍首相が唱える価値観外交である。
首相にとって、インド訪問はその実践と言えるものだった。だが、価値観を共にする相手であっても、国益の違いを乗り越えるのは容易でないことを思い知らされたのではないか。
「自然界に畏(おそ)れを抱く点にかけて、日本人とインド人には共通の何かがあると思わないではいられません」
安倍首相はインド国会での演説でこう述べ、自らが提唱する「美しい星50」への賛同を求めた。地球の温暖化を防ぐため、温室効果ガスの排出を2050年までに今の半分に減らす構想である。
温暖化防止が世界共通の課題であることには、インドも異論はない。シン首相は京都議定書後の枠組み作りへの参加を「真剣に考慮する」と応じた。
ただし、インドにとっては経済をさらに成長させて貧困層を減らすことが、温暖化防止と並ぶ重要課題である、と付け加えることも忘れなかった。
いま温室効果ガスの削減義務のないインドのような途上国に、今後どのような義務を負ってもらうのか。具体策に踏み込もうとすれば、難しい交渉になることを予感させる会談でもあった。
国益の違いをさらに強く印象づけたのは、米印の核協定問題である。
インドは核不拡散条約に未加盟のまま核実験を強行した。ところが、米国は査察を条件に民生用の原子力技術や核燃料を提供する協定に合意した。フランスやロシアも追随し、インドを核不拡散の例外扱いにする動きが広がっている。
首脳会談でインド側は米印協定への支持を求めた。これに対し、安倍首相は「唯一の被爆国として核不拡散体制への影響を注意深く検討する」と述べるにとどまり、態度を保留した。
理解しがたい対応である。被爆国の首相がこんなあいまいな態度を取っていいはずがない。大切な友人であっても、言うべきことは言う。核不拡散問題では譲歩できない、と明確に伝える。それが日本の役割ではないか。
そもそも安倍首相の価値観外交は、中国包囲という色彩を帯びている。
03年度以降、インドは中国に代わって円借款の最大の受け取り国になった。価値観外交の展開に伴って、援助額はさらに膨らんだ。
しかし、日本にとって中国が持つ重みは、インドとは比べものにならない。在留邦人でみれば、中国が10万人を上回るのに対し、インドは2000人ほどだ。相互依存の度合いが全く異なるのだ。
中国を牽制するテコにインドを使うような外交は見透かされる。インドにしても中国との交流を深めており、利用されることに甘んじるような国ではない。
価値観を声高に唱えるような一本調子の外交は考え直した方がいい。
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『日印関係 戦略的協調への第一歩に』(毎日)
アジア歴訪中の安倍晋三首相はインドのシン首相との会談で、政治、経済、安全保障、地球環境問題などでの連携を確認した。
国際社会の中で存在感を増しているインドとの関係を強化することは日本のアジア外交の幅を広げる観点から意味がある。しかし、多面的な外交を繰り広げるインドと付き合っていくには日本にもしたたかな戦略的視点が必要なことを忘れてはならない。
インドはIT産業の急速な発展を軸に経済成長を続けている。昨年のGDP(国内総生産)成長率は9%を超え、アジアでは日本、中国に次ぐ3番目の経済規模だ。世界第2位の人口を抱え中間所得層も拡大している。
安全保障面でも、インド洋は中東原油の日本への輸送ルートであるシーレーン(海上交通路)の安全確保のうえで重要な位置にある。緊密な協調が必要な相手だ。
しかし、最近まで両国の関係は緊密とはいえない状態が続いていた。人の往来をみても、日中間に比べると35分の1、航空便数は61分の1とかなり見劣りする。
今回の首脳会談のポイントは二つあった。地球温暖化対策と、インドと米国が合意した民生用核協力協定への対応である。だが、この二つの課題について目を引く成果があったとは言えない。
地球温暖化問題で安倍首相は、世界全体の温室効果ガスの排出量を2050年までに現状比で半減させるという「美しい星50」構想を説明した。実効ある温暖化対策を進めるには二酸化炭素(CO2)の排出量が世界5位のインドを取り込まなければならない。
安倍首相の協力要請に、シン首相は「ポスト京都議定書」の枠組み参加に前向きに応じたものの、先進国と同じように削減義務を負うことには慎重姿勢を崩さなかった。環境と経済の両立をタテに温暖化対策に消極的なインドを巻き込むにはさらに知恵を出す必要がある。
インドと米国の民生用核協力についてシン首相が日本の支持を求めたのに対し、安倍首相は明確な支持表明を避けた。インドは核拡散防止条約(NPT)に参加していない核保有国である。日本は核兵器の廃絶を目指す立場だ。イランや北朝鮮の核開発を非難しているのだからインドの核兵器保有を認めるわけにはいかない。
安倍首相はインド国会での演説で「拡大アジア」という新しい概念を打ち出した。自由、民主主義、基本的人権といった価値観を共有する日本と米国、豪州、インドの連携を訴えたものだが、この構想の裏側には中国けん制の狙いがみえみえだ。
だが、全方位外交のインドは中国との関係強化も図っており、一筋縄ではいかない。安倍首相の狙い通りに「反中国価値観」で実を結ぶほど単純な話ではないだろう。今後の日本のアジア外交には、対中国と対インドの効果的なバランス関係を考慮し、拡大アジアの中でどういう役割を果たしていくかということこそが問われる。
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『日印首脳会談 重層的な「新次元」の関係を築け』(読売)
日本とインドが昨年12月の首脳会談で合意した「戦略的グローバルパートナーシップ」をどう実質化するか。今回の首脳会談は、そのための具体的行程を示した。その重層的な合意内容を着実に実施していかねばならない。
安倍首相が、グローバルパートナーシップの象徴的なテーマとして重視したのが地球温暖化対策だ。温室効果ガスの排出量を2050年までに現状から半減するという構想を説明し協力を求めた。
シン印首相は、安倍構想について「国際的議論への重要な貢献だ」と評価し、2012年までの温室効果ガス削減目標を定めた「京都議定書」後の、新たな枠組み作りに参加する意向を表明した。
「ポスト京都」の温暖化対策は、米国や中国、そしてインドも含めた主要排出国の参加なしには実効があがらない。安倍首相が、インドからも一定の協力を取り付けたことは、成果といってよい。
ただ、シン首相は、「環境保全と経済発展を両立させることが重要だ」として新興国としての立場も強調した。経済成長を第一とする新興諸国を、どのように新たな枠組みに取り込んでいくか。今後の大きな課題だ。
シン首相は、民生用原子力で米国から支援を受ける米印原子力協定について、日本の支持を求めた。安倍首相は、明確な態度表明を避けた。
記者会見で安倍首相は、「日本は唯一の被爆国として、核不拡散体制への影響を十分見極めていく。注意深く検討していく必要がある」と述べた。
米印原子力協定は、核拡散防止条約(NPT)の枠外で核を保有した国への原子力協力であり、NPT体制を空洞化させかねない。日本として慎重に対応していくのは当然だろう。
戦略的なパートナーとしての日印協力を具体化する上で重要な課題の一つが、安全保障分野での取り組みだ。
共同声明は「シーレーンの保全と安全」確保のため、2国間協力の方向性について検討していくことを明記した。
シーレーンの安全確保は、原油などエネルギー資源を海上輸送に頼る両国にとって共通の利益だ。両国の関係当局で検討を進め、安保協力を向上させたい。
経済協力分野では、経済連携協定(EPA)の早期締結をめざすとともに、2010年までに、両国間の貿易額を現在の年間約100億ドルから200億ドルへと拡大することでも合意した。
日印両首脳は、両国関係を「新しい次元」に引き上げることで一致したという。そのための作業を加速させていかねばならない。
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『【主張】日印首脳会談 戦略的協力さらに育てよ』(産経)
安倍晋三首相は訪問先のインドでシン首相と首脳会談を行い、安全保障や経済、環境・エネルギーなどを柱とした日印の戦略的協力関係をさらに深めることで合意した。
今回の会談は、昨年12月のシン首相訪日の際に合意した「戦略的グローバル・パートナーシップ」を具体化に向けて進めることが主な目的だった。
両首脳の共同声明では、日印関係を「基本的価値観を共有し、最も可能性を秘めた2国間関係」と規定した。防衛・安保協力から、通商関係拡大、経済連携協定(EPA)促進、地球温暖化対策まで広範な分野を網羅し、実質的な前進をめざすことで合意ができたのは大きな成果といってよい。
日印関係は最近まで活発といえなかったし、通商・投資面でも発展の余地を大きく残している。安倍首相には200人余の経済界代表も同行した。政府間協力に加えて、民間の経済分野でも相互協力の深化と拡大に努める意味は小さくない。
また、安倍首相がインド国会で行った「二つの海の交わり」と題する演説で「強いインドは日本の利益であり、強い日本はインドの利益だ」と強調した点も重要だ。アジアの軸足を確認しつつ、日印両国に米、豪も加えた「拡大アジア」の枠組み強化に取り組む姿勢を打ち出したことを評価したい。
来年のシン首相訪日時には、日印間の安全保障協力に関する報告をまとめるという。首脳相互訪問や首脳会談の年次開催という形で、日印は戦略的パートナー関係をさらに緊密なものに育てていく必要がある。
今回の歴訪で安倍首相は、インドネシアで対ASEAN(東南アジア諸国連合)外交の新方針を打ち出すなど、麻生太郎外相とともに進めてきた「主張する外交」「価値の外交」を戦略的に展開してきた。
アジアは中国の台頭などで21世紀のパワーゲームの最も動きの激しい焦点となっている。その中で、日本外交の戦略的地平を多角的に広げていく作業はきわめて大きな意義を持つ。
安倍首相には、帰国後の週明けに参院選後の内閣改造が待っている。世界の中で戦略的外交を進める姿勢を堅持していくうえでも、それにふさわしい布陣を期待したい。
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