高校日本史の山川教科書批判(その8)
いよいよ近現代史。これは突っ込みどころてんこ盛りです。
まささんに以前指摘頂いた「近隣諸国条項」は近現代史を諸外国(特ア三国)の好き放題にさせるような条項です。
その条項が適用されない近世以前でもこれだけ酷かったんだから、ここからどれだけ酷いことになっているか…
第4部 近代・現代
まず、真っ先に全体概略を述べています。
『産業革命後のヨーロッパ列強は、アジアへの進出を開始した。中国では…植民地の獲得に乗り出し…帝国主義と呼ばれ…』
この頃のヨーロッパ列強の動きはまさに「アジアへの侵略」そのもの。これは少し先のページから引用しましたが、残ったのは日本、緩衝地点としてのシャム(タイ)、実質的には列強に支配されている清の3ヶ国だけ。
それに対して日本に関する記述は
『対外的には台湾の領有、韓国の併合、満州事変・日中戦争と東アジアへの侵略を進め、ファシズム国家群にくみして第二次世界大戦をたたかい、敗北した。』
すさまじい自虐史観の記述。ロシアの脅威などは無視、満州事変やシナ事変は無条件に日本の侵略戦争、日本はファシズム国家群の一員…
これが全体概略だから先が思いやられます。
第9章 近代国家の成立
1.開国と幕末の動乱
2.明治維新と富国強兵
3.立憲国家の成立と日清戦争
4.日露戦争と国際関係
5.近代産業の発展
6.近代文化の発達
長いので今回は本章の1と2を取り上げます。
1.開国と幕末の動乱
ところで今回ふと気になったのは用語の説明が不足していること。「攘夷の空気の雰囲気が強く」「志士たちから強い非難の声」と唐突に書かれると、攘夷・志士ってなんだ?となります。「竜馬が行く」を読んでいるのが前提、ってわけでもないでしょう。全部の用語に注を振るのは無理にせよ、時代のキーワードくらいは解説が必要なのでは。それは先生が授業中に解説するということでしょうか。
さて、やっと本文に入ります。英が薩長方、仏が幕府方の援助をしていた話、宣教師が西洋文化を広めた話などが載っていました。しかし、その背景にある、両国が日本における勢力の拡大を狙っていた(植民地化も含め)ことは全く載っていません。これでは、江戸城無血開城は、内戦に欧米列強がつけ込むのを防ぐ意味が大きかったことなど、理解できません。欧米が好意で日本を援助したように読めてしまいます。あ、著者は本気でそう思っているのかな?
2.明治維新と富国強兵
明治政府に対して実に批判的な書き方です。
『政体書を制定し政府の組織を整えた…多分に形式的とはいえ、欧米的な近代政治の体裁を取った』
『全国の民衆に向けて五榜の掲示…旧幕府の対民衆政策をそのまま引き継いでいた。』
前者は、多分に形式的、と書いたあたりが、後者は、実は本掲示は応急措置で、明治6年までに撤去されたことをスルーしている(明成社の教科書で分かりました)あたり、明治政府に対する反感を示しています。
国際問題では、まず琉球の取り扱い。
『名目上は清国を宗主国』
こんなことはシナ側の主張に過ぎず、記述不要。そして台湾での琉球漂流民殺害事件では、台湾を化外の民(自国の支配が及ばないこと)と言って清が無責任な態度を取ったので、明治政府が台湾に出兵し、というのは事実なのに、
『清国との間で琉球漂流民保護の責任問題がもつれ、軍人や氏族の強硬論におされた政府は、1874年に台湾に出兵』
日本が一方的に侵略したと言いたげです。その後には
『イギリスの調停もあって、清国は日本の出兵を正当な行動と認め…沖縄県を設置』
台湾出兵で沖縄をもぎ取ったように読めます。うーん…
人物で言うと、ここまで明治天皇の名は、注に小さく即位の礼を上げた旨の記述があるだけ。よほど嫌いと見えます。不敬の限り。
当初、今回は「3.立憲国家の成立と日清戦争」まで書こうと思っていたのですが疲れました。その節も反日山盛りなので…
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