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2006年1月 1日 (日)

20070515国民投票法の4紙社説

『投票法成立―「さあ改憲」とはいかぬ』(朝日)

 憲法改正の是非を問う国民投票法が成立した。野党第1党の民主党も含め、政党間の幅広い合意を目指してきたが、結局、自民と公明の与党が野党の反対を押し切った。

 いまの憲法ができて60年。初めて国民投票の手続きを定める法律をつくろうというのに、こんな形の決着になったのはきわめて遺憾である。

 衆参各院で3分の2の賛成がなければ発議すらできないという憲法改正の規定は、改正にあたって国民の幅広い合意形成を要請したものだ。そのルールを定める話なのに、参院選への思惑といった政党の損得勘定が絡み、冷静な議論ができないまま終わってしまった。

 最低投票率の問題をはじめ、公務員や教員の運動に対する規制など、詰めるべき点を残したままの見切り発車である。18項目にもわたる付帯決議でそうした問題の検討を続けるとしたが、ならばじっくりと論議し、結論を出してから法律をつくるべきではなかったか。

 さて、投票法の成立を受けて、安倍首相は7月の参院選で改憲を問う姿勢をますます強めている。

 そもそも投票法の成立を急いだのも、それが目的だった。中川秀直自民党幹事長は、今度の選挙で選出される参院議員について「任期6年の間に必ず新憲法発議にかかわることになる」とまで語り、自民党議員の当選には改憲への信任がかかっているとの考えを示した。

 改憲の中身として首相が語るのは、自民党が昨年発表した新憲法草案だ。その根幹は9条を変えるところにあると言っていいだろう。

 自民党案の9条部分を読んでみよう。

 9条2項の戦力不保持や交戦権否認の規定は削除され、代わりに「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する」といった文言が入る。

 つまりは、現在の自衛隊ではなく、普通の軍隊を持つということだ。自民党は、今後つくる安全保障基本法で自衛軍の使い方をめぐる原則を定めるとしている。だが、たとえ基本法に抑制的な原則をうたったとしても、憲法9条とりわけ2項の歯止めがなくなれば、多数党の判断でどこまでも変えることが可能だ。

 集団的自衛権の行使に制約をなくし、海外でも武力行使できるようになる。いつの日か、イラク戦争で米国の同盟国として戦闘正面に立った英国軍と同じになる可能性も否定されないということだ。

 首相は憲法を争点にするというのならば、自衛軍を持つことの意味、自衛隊との違いをもっと明確に語る義務がある。「戦後レジームからの脱却」といった、ぼんやりした表現ではすまされない。

 投票法ができたといっても、自民党草案や自衛軍についての国民の論議は進んでいない。参院選ではそこをあいまいにすることは許されない。

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『国民投票法成立 論憲をいっそう深めよう』(毎日)

 憲法改正の手続きを定める国民投票法が14日成立した。憲法が施行されて60年。手続き法とはいえ戦後政治が大きな節目を迎えたことは間違いなかろう。

 毎日新聞は社説で憲法に改正条項がある以上、国民投票の仕組みを決めるのは当然だと主張してきた。しかし、手続き法の制定が即、改憲につながるとも考えていない。今後、避けなければならないのは、具体的、現実的な議論もなしに「改憲か、護憲か」と単純に色分けするようなムードが広がることだ。大切なのは国民が判断するに足る冷静な論議の積み重ねである。

 国の最高法規である憲法の改正について落ち着いた議論を進めるためにも、私たちはせめて手続き法は各党が納得ずくで結論を得るのが望ましく、そのためには与党と少なくとも野党第1党・民主党の合意が不可欠だと再三、主張してきた。その点、参院に審議が移った後も双方が歩み寄ることがなかったのは極めて残念だ。

 ◇党利党略の結末

 きっかけを作ったのは安倍晋三首相だ。与党と民主党の実務担当者間では国民投票法には党利党略は絡めないとの了解があり、昨年末には合意寸前まで来ていた。ところが、首相は今年1月、改憲を7月の参院選の争点とする考えを表明し、これが、国民投票法を参院選で「安倍カラー」を打ち出す成果にしようとしているとの野党の批判を招いた。

 もっと理解できないのは民主党だ。小沢一郎代表は元々、与党と合意する気などなかったというほかない。参院選を控え、ここで合意しては対決姿勢がそがれる。改憲に反対の社民党などとの参院選での選挙協力も難しくなる。何より、民主党内で改憲に関して意見が一致していない。小沢氏がこうした党内事情を優先したのは明らかだろう。

 ちぐはぐさを象徴したのが、参院審議に入って突然、民主党の議員が、一定の投票率に達しなければ投票を無効とする最低投票率制度の必要性を訴え始めながら、新たに提出した対案には盛り込まなかった点だ。最低投票率は導入しないことで実務者間では既に与党と合意している。行き当たりばったりと言われても仕方あるまい。

 もちろん、国民投票法自体にも課題は残っている。テレビ・ラジオで投票を呼びかける有料CMは投票2週間前から禁じられるが、メディアの自主性を尊重すべきだとの意見は根強い。公務員や教育関係者の地位利用による運動は規制されるが、具体的にどんな行動を禁じるのかも定かでない。

 国民投票法が施行される3年後まで改憲案は審査、提出できないことになっている。与野党とも頭を冷やして修正すべき点は修正する作業を続けるべきである。

 国民投票の投票権者は18歳以上となった。世界の流れからしても当然のことだろう。これに伴い通常選挙の選挙権年齢も今の20歳以上から18歳以上とするなど関連法との整合性も検討していくことになる。民法や少年法などにもかかわる話だ。これも与野党で真剣な審議が必要だ。

 改憲の中身についても、きちんと論議を始める時だ。参院議員の任期は6年。7月参院選は改憲を発議することになるかもしれない議員を選ぶ選挙となる。憲法問題はいや応なしに参院選の争点となる。焦点はやはり9条だろう。

 安倍首相は先の特別委で自民党が一昨年秋にまとめた同党の新憲法草案が「党としてはベストと考えている」と答弁し、これを参院選で掲げていく考えを示した。

 草案は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」との憲法9条1項は維持し、2項を全面改定して、わが国の平和と独立、国・国民の安全を確保するため自衛軍を保持する内容だ。

 発表時、自民党は現憲法で禁じられていると政府が解釈している集団的自衛権の行使も可能になると説明したが、明記はしておらず、自衛軍の具体的な活動内容は別の法律で定めることにしている。では隊と軍はどう違うのか。

 首相は国会で「海外で武力行使ができるということか」との質問に対し、草案を読み上げるだけで明言を避けた。世論調査を見ても憲法問題は国民の関心が決して高いとはいえず、必ずしも理解が進んでいるとはいえない状況だ。こうした答弁では、ますます国民は判断ができなくなる。

 ◇押し付け論だけでは

 安倍首相は集団的自衛権に関する懇談会も設置している。行使ができると解釈変更した場合、さらに憲法改正してどうしたいのか。そこも不明だ。改憲案は関連する項目ごとに区分して発議することになったが、全面改正といえる自民党草案を、どんな手順で発議していくのかも分からない。

 首相が参院選の争点にするというのなら「押し付け憲法だから」とか、「時代に合わないから」といった抽象論ではもう済まない。分からぬことが多いままで、賛成か反対かで世論を二分するのではなく、いかに国民のコンセンサスを作っていくかが重要なのだ。どんな国にしたいのか、それが国民にどう影響を及ぼすのか。地道に議論を重ね、国民の判断を仰いでいく。それが毎日新聞が提唱してきた論憲の意味である。

 民主党も論戦から逃げてはならない。昨年末には専守防衛の原則を確認する一方で、国連の平和活動には積極参加するとの基本方針をまとめているが、改憲の必要はないということなのかどうか。党内議論を進めるべきだ。

 結論を急げというのではない。だが、憲法問題が新たな段階に入ったことを正面から受け止めたいと思う。私たちもいっそう議論を深めていきたいと考えている。

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『国民投票法成立 新憲法へ具体論に入る時だ』(読売)

 憲法制定以来、60年以上も放置されてきた憲法体制の欠陥がようやく是正された。

 憲法改正の手続きを定める国民投票法が、自民、公明の与党などの賛成多数で可決、成立した。国民の主権行使の中で最も重要な憲法改正にかかわる主権を行使することができるようになる。

 国際情勢や日本の安全保障環境の劇的な変貌(へんぼう)、日本の経済・社会の根本的な変化など、今日の内外の姿は、憲法制定時には想像すらできなかったものだ。しかも、今後さらに大きな変化の波を乗り切っていかねばならない。

 ◆憲法審査会の責務◆

 その指針となる新憲法を定めるための重要な基盤が整ったと言える。

 国民投票法は本来、与野党が対立する性格のものではない。民主党の小沢代表が、夏の参院選に向けて与党との対決姿勢を打ち出し、国民投票法を与野党対立に巻き込んだのは残念なことだ。

 参院本会議での採決の際、民主党の渡辺秀央元郵政相が、「政治家としての信念」として賛成した。民主党には、本心では同様の立場に立つ議員が、少なくないのではないか。不毛な対立から一刻も早く抜け出すべきである。

 参院選後の臨時国会から、衆参両院に憲法審査会が設置される。法施行は公布から3年後とされ、その間、憲法改正原案の提出はできない。だが、法施行後、速やかに改正作業に入ることができるよう、具体的な論点を整理することは、審査会に課せられた最重要課題だ。

 安倍首相は、参院選で、自民党が2005年に公表した条文形式の「新憲法草案」を有権者に問う、と言う。民主党は「憲法提言」を発表し、公明党は「加憲」を主張しているが、いずれも未(いま)だに条文の形にはなっていない。

 もはや「憲法改正の是非」ではなく、変えるとすれば、どこをどう変えるのかを論じるべき時だ。その観点から、民主、公明両党も条文化を急いでもらいたい。各党が具体的な改正案を明示し、憲法改正原案の基本となる要綱策定の作業を促進することが大事だ。

 関連の法整備にも早急に着手する必要がある。

 国民投票の権利を持つのは「日本国民で年齢満18年以上の者」とされた。これに伴い、付則第3条は、法施行までの間に、選挙権年齢、成年年齢をそれぞれ20歳以上と定めている公職選挙法及び民法その他の法令を検討し、「必要な法制上の措置を講ずる」としている。

 ◆18歳投票の法整備を◆

 国会図書館の調査では、米英仏独など欧米はもちろん、ロシアや中国も含め、186国・地域のうち162国・地域が、18歳以上だ。これが世界の標準だ。18歳以上とするのは自然なことだ。

 人口減の下で、国の将来への若い世代の責任意識を高めることにもなる。

 無論、法整備は容易ではあるまい。

 成年年齢を18歳以上に見直す場合、関係する法律は100本を超える。国民の権利・義務、保護など、社会のあり方に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 例えば、18歳になって犯罪を犯せば、少年ではなく、成人としての刑事責任を負う。実質的な厳罰化となる。

 未成年者の法律行為は、原則として法定代理人の同意が要る。18歳で民法上の契約ができることになれば、若年世代の経済活動の範囲が広がる。それに伴い、責任も負うことになる。

 広範な影響を考慮し、日本社会のあるべき姿を見据えた検討が必要だ。

 先の参院憲法調査特別委員会での採決に当たって、自民、公明、民主3党の賛成で付帯決議を採択した。法施行までの間、憲法審査会で憲法改正上の課題について十分調査することなど18項にわたるが、全体として妥当な内容である。

 与党には、民主党に一定の配慮をすることで、将来の憲法改正での共同歩調の可能性を残したい、という判断もあったのだろう。

 気掛かりなのは、憲法審査会で、法施行までに、いわゆる最低投票率の制度の「意義・是非」について検討を加える、としている点だ。

 一定の投票率に達しないと、国民投票自体を無効とする最低投票率制度の導入は、従来、共産、社民両党などが主張してきた。憲法改正を阻止するための方策という政治的な意図が背景にある。

 ◆最低投票率は不要だ◆

 だが、外国を見ても、最低投票率制度を導入している国は少数派だ。欧米先進国では、米独には憲法改正に関する国民投票制度はない。フランスやイタリアには、最低投票率の規定がない。

 衆院で否決された民主党提出の国民投票法案にも、最低投票率の規定はなかった。最低投票率制度の導入にこだわるべきではあるまい。

 憲法審査会の論議が進めば、有権者は現実の課題として憲法改正に向き合うことになるだろう。時代の要請に応えて、新憲法へ、大きな一歩をしっかりと踏み出さねばならない。

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『【主張】国民投票法成立 新憲法制定が政治課題だ』(産経)

 憲法改正手続きを定める国民投票法が成立し、施行から60年間放置され、改正を事実上阻んできた法的不備の状態が解消された。新憲法制定が現実的な政治課題となった歴史的な節目といえる。

 憲法改正原案の提出や審査は、平成22年の国民投票法施行まで3年間凍結されるが、国民投票の実施に備えて詰めておくべき課題は多い。

 新憲法が国民参加の下で制定される過程で、中立性を求められる公務員にどこまで政治的活動が認められるかという問題もその一つだ。

 国民投票法では、政治的行為を制限する国家公務員法、地方公務員法の規定が原則適用される。しかし、公明党の意向で「賛否の勧誘」や「意見表明」を認めるため、何らかの法律上の措置をとることが付則に加えられた。民主党は公務員への制限撤廃を唱えたほどであり、自公民3党の間でも考え方に大きな違いがある。

 日教組のイデオロギー闘争が教育現場に弊害をもたらしてきたことを考えれば、公務員の政治的活動を無制限に認めることへの懸念は拭(ぬぐ)えない。

 特定の主義主張や省益などを背景とした公務員の政治的活動が、国民の自由な判断に干渉を与えないようにするという観点が欠かせないだろう。

 国民投票の導入にあたり「18歳成人」をどう考えるかという身近なテーマもある。投票年齢が選挙権年齢の20歳から18歳に引き下げられることで、未成年者の結婚年齢(男18歳、女16歳)はどうなるのか。飲酒・喫煙の解禁は20歳以上に据え置くのか。

 関係する法律は約30本に及ぶという。新憲法制定への国民の関心を高める意味でも大切な作業である。

 参院選後、衆参両院に置かれる憲法審査会が新しい議論の舞台となる。国民投票実施に向けた環境整備にしっかり取り組んでほしい。

 もとより、肝心の憲法改正の中身の方の議論を忘れてもらっては困る。すでに自民党は新憲法草案を持っているが、公明、民主両党はいまだに条文化作業に着手していない。

 14日の参院本会議では、与党案に反対の立場をとった民主党から賛成者、欠席者が出た。3年間の凍結期間を理由に、党内論議を先送りするような姿勢はもう取れないはずだ。

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